ABOUT MAPPING


プロジェクションマッピングという言葉が表すもの

 
改めてプロジェクションマッピングという言葉からその手法の意味について考えてみると、そもそも「プロジェクションマッピング」は英語の説明的から生まれた造語です。欧米では同表現を表す言葉が他にも存在し「Video Mapping」「Visual Mapping」「3D Mapping」や「3D Projection Mapping」「Mapping Projection」、そして建物へのそれは特別に「Architectural Mapping」や「Building Mapping」とも呼ばれています。共通するのは「Mapping」という言葉で、それは投影される対象にCG映像やモーショングラフィックス等を、対象上に配置、またしっかりと実物と重ね合わせることを意味しています。プロジェクターを使って「マッピング」するので「プロジェクションマッピング」、映像を使ってマッピングするから「ビデオマッピング」や「ビジュアルマッピング」、そして建物に映像をマッピングするから「アーキテクチャルマッピング」や「Building Mapping」となるのです。

また「3Dプロジェクションマッピング」という言い方を最近よく耳にしますが、これは様々な使い方、考え方で用いられていますが、主に3D映像を用いながら、立体的な視覚・空間感覚を与えるモノをさしています。単純に3DCGで作られた映像をマッピングするから、立体物や3次元空間にマッピング投影するから、そして特定の視点、または多視点からの観賞をから立体的に感じるように設計する、という考えがあります。さらに眼鏡等をかけた「立体視」(これは別途S3Dとも言っている)を3Dと考える人もあります。3Dという枕詞にはそれほど表現としての意味はなく多くのものが、プロジェクションマッピングという考え方の中にあるわずかな違いです。

 


 

二つのプロジェクションマッピング

 
マッピングをする場合に、さらに大きく二つの方向性があります。既存の素材をソフトウェアなどで変形させたりしながら対象へマッピングする方法と、投射対象を最初から映像の雛形にし、その為に新しくデザインした映像などをマッピングする方法。この2者には制作のプロセス、時間にも大きな差があります。前者はマッピングする為のソフトウェアとプロジェクター、そして映像や写真など何か映写素材さえあれば、即座にマッピングしていくことができます。一方後者のオリジナルで制作する場合には、まず対象を映像制作する為にフォーマット化(このデータをマスターデータと呼びます)する必要があります。このマスターデータはプロジェクターの設置位置や鑑賞者の視点なども意識しながら作り、ある程度の精度が求められます。それによって、実際に投射する際のマッピング調整に大きな差が生まれます。長い時間と労力、場合によってはコストもかかってきますが、オリジナルの作品を制作したり、完成度の高い演出を行うにはとても重要で、立体的な体感や感動的な作品はこの時間を経て生まれてきます。

 


 
プロジェクションとプロジェクションマッピング

 
多くの人が混乱していることに「プロジェクション」と「プロジェクションマッピング」の違いがあります。建物に映像投影すればPMだと思う人も多いのですが、単純に映像投影するだけであればそれはプロジェクションになります。

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例えばこうした丸い装飾のある壁があったとします。

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これに映像を単純投影したものはプロジェクションで、丸い形とは何の関係性も持ちません。

 

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次にこの丸い形状の中にだけプロジェクションし、それ以外は表示しないように、不要な所をカット(マスク)してみます。これが対象に合わせて映像を配置(マッピング)した状態で、一番簡単なPMとなります。

 

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今度は、この丸い形に合わせて立体的(3D)な映像を投影すると平面に立体感が与えられます。

 

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 さらに光と影を与えると、円の周囲に奥行きや空間性が生まれ、立体感や空気感にリアリティが与えられていきます。

 


 

プロジェクションマッピングに必要な考え方

PMの手法や考え方は、実に多様で可能性に満ちた表現です。投影対象や環境が変わればコンテンツも変わり、クリエイターが異なればそのテイストも多様になるので、PMは更に広がりと奥行きを持ってきます。そして映像制作者にとっては表現するフィールドが広がり、これまでの四角いフレーム内でイメージし制作していた時代から、空間へレイアウトする映像制作、そして多様なメディアを総合的に扱った空間演出をするという新たな時代へと入っています。この新たな映像時代に制作者は何を考えるべきでしょうか?

コンテンツに於いて、日本国内では焼き直しをした感のある表現が多くなっていますが、欧米では未だに、新たな角度での制作、新鮮で驚きのある作品が生まれています。そうしたプロジェクトの多くはユーモアに溢れているというのも注目すべき点です。日本の特に広告業界においてはクライアントや代理店の立場が強く、「プロジェクションマッピング」はこういう物で、こんな感じで作ってほしいというオーダーや意向が強く反映されてしまう。そうするとクリエイターはオリジナリティや新しい手法を提案することは、逆にリスクになる為、相手やオーディエンスの反応を伺いながらの予想通りの表現になってしまうことが多い。そして安く、器用な職業クリエイターが歓迎されるのがPMに限らず多くのシーンで見受けられる。そして同じ表現がすり減る様に至る所で使われ、古びて行ってしまうのです。

しかし世界では全く逆の発想を持っており、既出の表現をなぞることはアイデンティティの欠如や表現力が乏しいと見なされてしまう。ここに日本と欧米での新規性の差、作品性の差が生まれる原因となっている。

今後はクリエイターがイニシアチブを取れるポジションをしっかり確立し、請負いではなく、クライアントや代理店と同じ目線で新たな価値を作っていくスタンスや関係が重要なのだ。そして日本ならでは、クリエイターならではの作品性や個性を出して行くことで、外海への広がりをもたらすことが出来る。現在クリエイティブに限らず多くの市場は国内に求める必要は無くなっており、むしろ国外へも積極的に目を向け、そちらでの評価やポジショニングも考えて然るべき時代だ。